2015年度  大阪医療福祉専門学校

色彩が運動イメージに及ぼす影響
正確な運動イメージを想起させる色彩の検証


2015_ocmw

抄録

I 背景

今日の作業療法では,臨床現場において様々な色彩や形状の道具を使用されているが,色彩の視覚情報による運動パフォーマンスへの影響はあまり意識されていないものと考えられる.

リハビリテーションにおいて,運動学習の導入期に視覚の与える影響は極めて大きく,視覚的な指導から徐々に筋感覚に注意を向けることがより効果的とされている1).

一方で、運動学習において運動イメージの重要性も示唆されている.樋口らがいうには,「急性期患者のように身体を使った運動学習が困難な患者に対して運動イメージさせることは,その後のリハビリテーションにおいて効果的とされている」2).運動イメージは,聴覚,体性感覚と共に「形状」,「明暗」,「色彩」,「距離」,「大きさ」などの情報を得る視覚が統合されて得られている3).視覚情報の一つである色彩には,実際の位置より進出して見える「進出色」,その反対の効果を持つ「後退色」という距離知覚に影響を与えるものがある. 兄井らがいうには「距離や奥行き,大きさ,重量,温度などの色以外の知覚的判断に影響を及ぼし,対象の見やすさなどにも変化をもたらす」4)とされ,運動イメージを想起するにあたり,その正確さに影響を与える可能性が考えられた.よって,より正確に運動イメージを想起できる色彩のリハビリ道具を使用することにより,運動パフォーマンスの向上に繋がるのではないかと考えた.