抄録
要旨
高畠ワイン(株)との共同研究として出羽三山(月山・湯殿山・羽黒山)の植物からワイン用酵母の単離・選抜を試みている。一昨年度は出羽三山の花を採取し、単離酵母 177 株からアルコール発酵能を示す 1 株を月山サンプルから選抜した。昨年度は同酵母の同定を行い Torulaspora delbrueckii と同定した。又、平行して 湯殿山・羽黒山で花を採取し、花からの単離酵母 413 株についてアルコール発酵能を調べたが発酵能を示す株を見出すことが出来なかった。
そこで、今年度はまず予備試験として当校周辺の植物を対象として酵母の単離源を再検討し、この検討結果に基づき再度出羽三山植物からの有用酵母の単離・選抜を目指す事とした。
又、月山酵母を使用してワインの試験醸造を行い、醸造特性を調べる事とした。
単離源として花以外に樹皮や葉に着目し、旧呑川緑地でサンプルを採取し、レーズン培地で集積培養して酵母を単離し、更にブドウ果汁培地で単離酵母のアルコール発酵能を調べた。その結果、ヒマラヤスギ樹皮由来酵母 32 株の内、7 株が アルコール発酵能を示した。そこで当校周辺の 3 ヵ所の公園から 7 種類の樹木の樹皮を採取し、同様の方法でアルコール発酵能を調べた。その結果、単離株の 50% が 8%以上のアルコール発酵能を示し、樹皮がアルコール発酵酵母の極めて有用な単離源であるという新知見を得た。以上の結果を踏まえ、出羽三山でそれぞれ 2 種の樹木から樹皮を採取し酵母の単離・選抜を行った。8%以上のアルコール発酵能を示す株が合計 61 株得られた。代表株を同定した結果、4 種類の酵母の同定 に成功した。
きょうかい酵母単独ときょうかい酵母と月山酵母の混合使用による試醸ワインの官能評価を行った。白ワインでは酵母混合使用の方が評価が高く、赤ワインでは両者間で同等の評価であった。