2017年度  大阪ハイテクノロジー専門学校

肩関節脱臼モデルの作成
~学習効果の検討~



抄録

要旨: 肩関節脱臼は臨床において遭遇する機会の多い傷病の一つである.脱臼は早期の整復が理想とされ,整復が遅れるにつれ壊死やボタン穴機構などの危険性が高まる.柔道整復師による施術は麻酔を行わないため,整復時に痛みを伴うことなく整復するには,高い技術が必要である.しかし,近年規制緩和により大学や専門学校に柔道整復師学科や学生が増加し,臨床現場において学生が実際に患者さんを整復する機会が減少し十分な整復技術を習得できていない柔道整復師が増加しつつある.そこで,実際の脱臼に近い状態を人体模型に再現し,実際の患者さんに整復することなく,整復技術を習得できる肩関節脱臼モデルの作成を目指した.作成方法は,骨模型(上腕骨,肩甲骨),キネシオロジーテープを使用.靭帯作成方法は,各種靭帯の長さを想定し切断.半分に折り曲げて端から1㎝のところを凸型に切り抜き,台紙を張り合わせ靭帯とした.肩関節脱臼モデル作成後,柔道整復師養成校に在籍する学生を対象に脱臼の再現,整復を体験してもらい,アンケート調査を行った.完成した肩関節モデルを用いて脱臼の再現を行ったところ,中関節上腕靭帯と下関節上腕靭帯の間であるルビエール孔から脱臼することが分かった.また,アンケート調査ではほとんどの学生から肯定的な回答があった.今回,作成した肩関節脱臼モデルは整復や受傷機転を学ぶ上で,整復技術の習得に大きく関与することが分かった.今後教材として開発,研究を進めていきたい.

Keywords: 肩関節前方脱臼 コッヘル法 ルビエール孔 バイトブレヒト孔