2008年度  東京バイオテクノロジー専門学校

おからを原料としたキシリトールの発酵生産


2008_bio

抄録

第1章 要旨

 糖アルコールは糖鎖の長さで違いがある第一世代と、糖そのものが違う第二世代がある。キシリトールは後者に属し、ブドウ糖や砂糖と同程度の甘味、保湿性、吸熱性、冷感性、非う触性などという性質がある。近年ではその甘味性からガムや飴などの甘味代替品として多く使用されているほか、保湿性の高さから化粧品や入浴剤、更には吸熱作用があることから着心地のさわやかなシャツやストッキングなどにも利用されている。

 豆乳と比べて食物繊維やカルシウムを豊富に含んでおり、産業廃棄物として年間約 80万t 処分されているおからを培地とし、微生物によりキシリトールを発酵生産することを検討した。5% キシロースに、おからを 20% 加えた培地(おから培地)に乳酸菌や乾燥酵母などの各種の菌を接種し、培養(30°C・148時間)した。その結果、産膜酵母(M2-22,M2-42,M2-45)のみがキシリトールを生産していた。キシリトールは前処理を行った後、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) ODS カラム,展開溶媒 酢酸エチル:エタノール:アセトニトリル:水=30:30:23:17 で分析した。

次に3種類の産膜酵母のみを培養した結果、M2-45 が最も生産性が高いことがわかった。そこで大量培養するため、M2-45 を使用し、ジャーファーメンターを用いて培養(30°C・200rpm・0.83vvm・504時間)した。培養途中、培地内のキシロース濃度が 0% 近くまで落ちたので定期的にキシロース水を培地全体のキシロース濃度を 5% になるように添加した。

キシリトール濃度が 5.23% に達した培養液から精製を試みた。培養液は、クロロホルムとジエチルエーテルで除淡白、脱脂後、この濾液をエバポレーターで濃縮した。その濃縮液に 5 倍量のエタノールを加え 4°C で静置させ結晶ができるのを待った。結晶が確認できたら吸引濾過し、結晶と濾液に分離した。そしてこの結晶とキシリトール標準物質を赤外吸収スペクトルで比較確認した結果指紋領域が一致していた。よって今回精製した結晶はキシリトールと証明することができた。