抄録
1. 背景
アライメント不良の義足を長期に渡り使用していると、身体への負担が大きくなり腱や筋、関節部に支障をきたすことが多くなる。そのためアライメントは装着者にとって機能性、快適性を高める上で非常に重要な因子である。
臨床や教育の場では、義肢装具士の経験による歩容観察と、患者様のフィードバックによりアライメント変更を繰り返されるという主観的評価が多く、客観的評価への試みはあまり見られない。実際これらが用いられない理由としては、計測に長時間かかることや、広い空間を確保できないといったことがある。
アライメントの評価に対する研究は1975年、Strathclyde 大学でのアライメントの量的評価の研究から始まった。1984 年に Kerr や Hannah により異常アライメントを測定する器具が開発されはじめ、1987~1998 年に Zahedi ら、2000 年に Hansen らにより義足装着者による歩容の中で運動学、運動力学的にアライメントを測定する方法が確立されてきた。Compas™ の開発においても上記した文献などは考慮されているが、中でも 1967 年の Appoldt と Bennett によるアライメントの変更によりソケットと断端間の接触がどのように変化するかといった研究、1973 年の Pinzur からはじまったアライメントにより義足の安定性がどのように変化しているかといった研究、更に 1950 年の Hellebrand から始まったソケットの内圧を予測できるようにするといった研究がより重要視されているようである。いずれにせよ、長年客観的にアライメントを評価することの必要性が訴えられている。2004 年には、M. D. GEIL* and A. LAY らが足底圧と異常アライメントの関連性を確立した。この文献を基に、異常アライメントを見出すことが可能である。