2012年度  東京バイオテクノロジー専門学校

水溶性フルーツ香料の開発


2012_bio

抄録

要旨

 【目的】香料は、食品や香水、化粧品などの香粧品に至るまで様々な用途で使われている。一般的に、天然香料と、合成香料に分類され全てが油性である。天然香料において、果実から抽出された香料は、オレンジなどの柑橘系が一般的で、その他の果実から抽出された香料は存在していない。従って、現在流通している、各種フルーツタイプの香料は、合成香料を使用した調合香料である。そこで、本研究では株式会社 VELUTINA 様との産学協同研究でラ・フランス及び数種類の果実を用いて、食した際にその果実が感じ取れる新しい天然の水溶性フルーツ香料の開発と抽出方法の確立を目的とした。

 【方法】はじめに、香料の抽出方法として、減圧蒸留法、凍結乾燥法、水蒸気蒸留法の 3 種類の方法を検討した。次に、香料抽出時の条件として、果実ごとに、使用部位、抽出時間、試料量の検討を行った。さらに、抽出した香料については、GC-MS による含有成分の定性分析、安全性試験を行った。次に、既存の飲料製品に、抽出した香料を添加して、試飲前と試飲時の香りについて、官能試験を行った。

 【結果】水溶性フルーツ香料の抽出方法として 3 種類の方法を比較検討した結果、果実の種類を問わず抽出が可能であり、得られた香料は十分な強度をもち、果実の特徴が顕著に表れる水蒸気蒸留法で行うこととした。また、抽出の条件として、使用部位、抽出時間、試料量の検討を行った結果、使用部位は、果肉だけを用いる方が良い果実や、果肉と皮を用いた方が良い果実など、抽出時の条件は果実ごとに異なった。さらに、抽出時間や試料量に関しても、香料に適した香りが得られる条件は果実ごとに異なった。また、全ての果実において試料量を増やすことにより、より強い香料を得ることができた。GC-MS による含有成分の定性分析の結果、抽出した香料には、もとの果実と同様の香気成分が検出された。さらに、安全性試験では、一般細菌は検出されなかった。官能試験は、試飲前に比べ試飲時の方が香りを感じられるという回答が多く、試飲時には果実の香りがしっかりと感じられるという結果になった。