抄録
1. 序論・目的
近年の化粧品業界の傾向の一つとして、一般消費者の中では植物や微生物利用といった天然由来原料を使用した化粧品が人気を集めており、それに伴い多くの化粧品原料メーカーにおいても天然由来原料の研究、開発が盛んに行われ市場にも鉱物系オイルフリー、石油系活性剤フリー、パラベンフリーなどのワードを良く目にしている。また、地域ならではの原料を用いた化粧品も存在し、地域活性化の一案として注目されている。
そこで我々は、身の周りの食材をもちいた天然由来化粧品原料を開発できないかと考えた。まず「通年で製品の安定した提供」と「原料の安価な入手」が可能であるという条件にて食材の選定を行った。さらに、食材中のネバネバした成分に保湿性が期待できるのではないかと考え、それらの食材について様々な方法でエキスを抽出し評価を行った。その結果、ナメコの熱水抽出によって得られたエキスの持つ保湿性や高い粘性に着目した。そこで本研究では、ナメコエキスの持つ化粧品原料としての有用性について検討するとともに、物性及び他の化粧品原料との相互性や製剤にもたらす効果などの基礎的データの収集を行うことを目的とした。
しかし、得られたエキスにはいくつかの問題点があり、まずそれらの問題点を除去または軽減するための工程の調査、検討を行った。特有の臭気の除去方法として活性炭処理、かけらの分離方法としてろ過方法の検討、粘性の調製方法として希釈倍率及び濃縮方法の検討、微生物安定性への対応として防腐剤及び安定化剤の選定を行った。
その後、一般的な化粧品製剤の処方をモデルとして、ナメコエキスを配合しないコントロール処方およびナメコエキスを配合したナメコエキス配合処方を製造し、粘性、曳糸性、安定性、肌や毛髪への作用、製品中の他の原料との相互作用についての基礎的データの収集を行った。製造したものはスキンケア製品(洗顔料、クリーム、水性ジェル、乳液、固形石けん)及びヘアケア製品(シャンプー)である。
平成26年度 卒業研究論文「ナメコエキスの化粧品原料としての有用性に関する基礎研究」についての論文内において、ナメコの成分についてムチンに関する説明がありますが、他方、北里大学理学部化学科 丑田公規教授の研究では『日本では、山芋、オクラ、納豆などのねばねば物質を見た目で「ムチン」と呼ぶ習慣があり、広く流通している辞典などにも記載がある。しかし、これらの多くは別の物質で、構造からもムチンではない。』と発表されております。
従いまして、論文内のムチンに関する説明に誤りがありました。
表記の誤りにつきまして深くお詫びいたします。